🍃 摘みたてが命！美味しい緑茶を作る「鮮度維持」と伝統の「手揉み」技術

「本とおちゃの店 ゆたかの本屋ちゃん」の店主です。

私たちがおいしくいただく緑茶は、摘み取られた直後から飲めるようになるまで、いくつもの繊細な工程を経ています。特に、茶葉の鮮度を保つための管理と、茶葉の品質を決める製造工程の技術が非常に重要になります。

今回は、摘採された茶葉が最高の品質を保ち続けるための秘密と、伝統的な製茶技術をご紹介します。

1. 🚨 摘採直後から始まる「鮮度との戦い」

茶葉は摘み取られた瞬間から、植物として生きている状態です。この生葉をいかに傷つけず、成分を劣化させないかが、お茶の品質を決める上で最も重要になります。

* 葉に傷をつけない管理

摘み採った生葉に傷がつくと、そこに含まれる酵素と空気に触れ、酸化酵素が活発に働きます。これにより、葉に含まれる成分変化が早まり、水色（淹れたお茶の色）が赤褐色に変化するなど、緑茶の品質を低下させることにつながります。そのため、摘採や運搬時には、葉を傷つけないように丁寧に扱うことが大切です。

* 生葉の呼吸を抑える

生葉は摘採後も呼吸をしており、時間の経過とともに徐々に葉に含まれる成分が低下していきます。温度が $10^\circ\text{C}$上がるごとに呼吸は2倍になり、生葉の劣化（成分の消費）も早くなります。

• 温度管理: 良い品質の緑茶を作るためには、摘採後、できるだけ早く加工すること（加工までの時間を短くすること）が大切です。

• 保冷管理: 保管する場合は、周囲の温度が高くならないように注意し、生葉を積み上げずに熱を逃がすなどして、生葉の熱を下げるように心がけます。

2. 🔪 緑茶の命「殺青（さっせい）」の違い

茶葉の品質を決める最も重要な工程の一つが、摘み取った生葉に熱を加え、葉に含まれる酸化酵素の働きを止める工程です。これを**「殺青」**と呼びます。この殺青工程により、緑茶特有の鮮やかな緑色と香りが保たれます。

日本の緑茶のほとんどは**「蒸し製」**で殺青されますが、他にもいくつかの製法があります。

• 蒸す（蒸し製）: 蒸気を使うことによって短時間で均一に殺青でき、香りを残しつつ、鮮やかな緑色に仕上がります。日本の緑茶の主流な製法で、普通煎茶は蒸熱時間が $30 \sim 40$秒、深蒸し煎茶は $60 \sim 120$秒です。

• 焼く（焼き茶）: 枝ごと煎り火で炙ったり、葉を湯で煮出したりする製法です。

• 炒る（炒り茶）: 鉄製の釜で生葉を炒って殺青する方法です。中国や日本の九州地方の一部ではこの方法が主流で、「蒸し」にはない独特の香りが生まれます。

• 煮る（煮煎茶）: お湯で煮たり茹でたりして、生葉に均一に熱を伝える方法で、岡山県の美作番茶など、一部の地域で自家消費用として作られています。

3. ✨ 伝統の「手揉み」製茶の工程

手揉み製茶は、現代の機械製茶の原型となった伝統技術で、茶葉を丁寧に仕上げていきます。

1. 蒸熱（蒸し）: 蒸気の熱で摘み取った生葉の酵素の働きを止め、茶葉の青臭い匂いがなくなるまで冷やします。

2. 葉振（ようぶり）: 蒸した後、葉の水分を均一に蒸発させるために、両手で葉を上へ振り落とす作業を繰り返します。

3. 回転揉み: 葉の水分を揉み出しながら、熱水で水分を蒸発させる工程です。

4. 揉切揉み（中揉み）: 茶をよりながら乾かす工程です。

5. 繰り込み揉み: 茶の形を針状に伸ばす工程です。

6. こくり: 茶の形を整え、表面に**光沢（つや）**を出す最終工程です。

7. 乾燥: $60^\circ\text{C}$くらいの温度の助炭の上に茶を薄く広げて乾かします。

✅ まとめ：製法こそが緑茶の個性

緑茶の鮮やかな色、香り、そして成分を保つためには、摘採後の徹底した管理と、適切な殺青方法が欠かせません。特に「蒸し製」の技術は、日本の緑茶特有のフレッシュな味わいを支える柱となっています。